亡くなった後にお墓には入らず、海やお気に入りの場所に遺灰をまかれることを望む方が多くなりました。自然葬、樹木葬などの方法も含めると、実に選択肢が多様化しています。しかし、散骨は好き勝手にできるわけではなく、適正な手続きを行っていないと違法になる危険すらあります。
知らないうちに散骨が違法行為になってしまったり、亡くなってから規制があるために希望が叶えられなくなってしまわないように、しっかり許可を取っている業者を選んでおく必要があります。
日本においては管轄が複雑になるため、新しい散骨の方法の場合には複数の省庁に許可を取らなくてはならない場合もあるため、手続きは大変です。そのため、許可を得ている業者が限られているケースもあるので、遠方まで出向かなくてはならなかったり、費用が高めでも他に選択肢がない可能性もあります。
自分で散骨の手続きを行うのは現実的ではないので、関係官庁の許可も含めて業者に任せることになります。そのため、海にまくならその実績のある業者、自然葬や樹木葬にしても同様に選んでおいてください。対応している会社は少ないので、近所の葬儀屋で済むとは思わないほうがよいでしょう。
自然葬による散骨
海や山などに遺灰を還すのが自然葬です。とても広い意味があるので、具体的に考えていくと、海に散骨する、樹木葬を行うといった様々な選択肢があります。
自然葬とは墓の中に故人を眠らせるのと反対の意味とされているものの、ある程度曖昧な部分を含めた言葉となっています。散骨も含んだ概念であるため、耳にする機会も多いかもしれません。
幅広い意味を持つ言葉であるだけに、自然葬と聞いただけでは内容を絞り込めません。たとえば、風船の中に遺灰を入れて空に飛ばし、はるか上空で風船がはじけて風の中に散骨されて空気中に飛散するという方法もあります。必ずしも散骨を伴うとも限らないので、場合によっては骨を土に埋めることもあります。
それでは、散骨を伴わない自然葬の方法の一つである樹木葬について見ていきましょう。
樹木葬とは
墓石ではなく、樹木を印として活用するのが樹木葬です。中には桜を目印にしているケースもあるので、望ましい環境で安らかに眠れるのがメリットです。墓の下で窮屈な思いをするよりも、自然の一部になりたいというニーズに応えた方法です。
ただし、樹木葬は好きな場所に認められているわけではなく、墓地として許可された土地にしか行えません。そのため、現実問題として対象となるのは限られた場所になります。
樹木葬は近年になってから注目を集めるようになった方法なので、長い目で見た管理の仕方も含めて考えていく必要があります。散骨を伴うわけではないので、その土地との結びつきは強くなり、やはりしっかり整備してほしいと考えるのが通常であるためです。
樹木葬を行っている場所によっては、定期的に合同で祭事を行う仕組みを持っていることもあります。命日にこだわらず、そうした機会に集まって故人をしのぶというのも一つの方法です。そこで故人同士によるつながりが生まれることもあります。
海への散骨
自然に還るために多くの方が望むのが海に散骨することです。ハワイや地中海といった海外を希望する方から、故郷の海を望む方もいます。やはり業者によって請け負える地域に差があるので、あらかじめ希望の場所があるのなら、それに見合った選択をしてください。
何しろ海は世界中に広がっているので、散骨するにしても選ぼうと思えば各国に範囲が広がります。遺族にも同行してもらうのなら、その負担も考えておかなくてはなりません。ハワイのように海外でも比較的近場ならまだしも、往復に数日かかる場合もあるので、その点も考慮しておいたほうがよいでしょう。
海の水は循環しているので、どこに散骨しても結果的には同じという考え方もあるものの、やはり気持ちとしては違うのではないでしょうか。自分が本当に望む海を考えておいた方が、最期の迎え方として望ましいと思います。
行ったことのある場所を選ばなくてはならないルールはないので、生前には訪れる機会を作れなかった場所に散骨してもらうのも一つの方法です。カリブ海や地中海といった、なかなか行けない海を選んでもよいのではないでしょうか。
なお、海に散骨されることを希望する場合に限らず、死後の準備を事前に行っておくと、遺族の負担が減るだけではなく、自分の望みが忠実に叶えられることになります。仮に遺言を残したとしても、家族にも余裕がない場合や、情報不足によって断念してしまう可能性もあるので、そうした不安を解消するために、業者を探して生前に予約を入れておいたり、連絡先をまとめておくぐらいはした方がよいでしょう。